害虫駆除で生産性向上 人手不足の救世主に
松伏町の菅野製麺グループの菅野福島商事株式会社は11月24日、県営まつぶし緑の丘公園で行われた「第51回農業収穫祭」で農業用ドローンによる農薬散布の実演を行った。近年、少子高齢化や農業従事者の減少で、農業の生産性が減少している。ドローンは多くの労力をかけずに正確な農薬散布が可能で、農家にとっては人手不足を補う有効な手段となりうる。特に今年はカメムシの大量発生が稲作に深刻な影響を及ぼしたが、ドローンで農薬を散布したところは昨年並みの収量を得られたという報告も上がっており、注目を集めている。
実演でドローンはふわりと浮き上がると、地上数メートルのところでいったん静止。すぐに圃場(ほじょう)に沿って飛行を始め、端まで行って折り返しながら農薬の代わりに水を散布するデモンストレーションを行った。滑らかな動きに、見学者からは「おおっ!」と声が上がっていた。
ドローン散布のメリットは、上空から農薬を均一に1分間1反(300坪)の速度で散布でき、時間と労力を節約できること。また、複雑な操縦をしなくても、GPS技術を利用して飛行経路をあらかじめセットすることで、必要な場所に正確に農薬を散布できる。さらに、農作業者が直接農薬に触れないため、健康被害のリスクを抑えられる上、低高度で散布するため、周囲への影響が少ないなど、効率性、正確性、安全性などで優れている。
今年は全国的にカメムシが大量発生したが、特に稲は「イネカメムシ」に稲穂の汁を吸われ、実入りが悪くなる被害が多発。県東部では収穫量が例年の8割減となったところも出た。同町でも被害が大きく、「彩のかがやき」などの晩お くて生品種は3分の1にとどまった。県は7月に注意報を発令し、稲穂が出てから2回の農薬散布を呼びかけたが、個人の防除では追いつかないところも多かった。
そんな中、ドローン散布は絶大な効果を発揮した。ドローンで2回の散布を行った場合、昨年並みの収穫ができたが、行わなかったところは約7割収穫が減ったという。そのため今回のデモ飛行は、多くの農業従事者らの関心を引いた。イベントではイネカメムシ被害に遭ったコメも展示され、被害を防ぐドローンの力に注目していた。
同社は今年に入り、ドローン事業を開始。農薬用ドローン2機、測量用赤外線カメラ搭載1機、検定や練習の空撮用6機など9機を保有し、11月からは防災のための撮影などを手がけている。
同社は今後、営農者の継承などに貢献するためドローンの資格取得支援を行う。国家資格を取得するための研修を提供して、学科試験合格者には無償で実技練習の機会と場所を提供する。さらに資格取得者にはドローンの機体をレンタルするサービスを行う。農薬散布の依頼を受けた場合は、菅野の資格者が行うことも可能だ。その場合、基本、1反2000円の料金で行う予定だ。
同社はドローン散布を農業の生産性向上に不可欠な技術と見ており、「地域の農業発展に貢献するため、今後もこのようなイベントを積極的に開催し、最新技術の普及に努めたい」と話している。