越谷市

越谷/鴨場の水路など見学

市のバスツアーに60人

鴨を捕らえる引堀をのぞき込む見学者たち
鴨を捕らえる引堀をのぞき込む見学者たち

 越谷市大林にある「宮内庁埼玉鴨場」の見学バスツアーが5月23日、同市の主催で行われた。めったに見られない施設とあって、午前、午後各30人の定員に約13倍の応募があった。
 参加者はまず、常駐する5人の職員の案内で、鴨猟の手法や猟に使う「叉手網(さであみ)」の作製を動画で視聴した。猟は、訓練されたアヒルを使い、「引堀(ひきぼり)」と呼ばれる水路にカモをおびき寄せて捕らえる。アヒルと一緒に餌を食べに来たカモを「小覗(このぞき)」という小さな穴から「鷹匠(たかじょう)」がうかがい、サインを出す。同時に小土手から人が飛び出し、驚いたカモが飛び立つところを、叉手網で捕獲するのが伝統猟だ。
 叉手網は、カモを無傷で捕獲するため手作業で作られ、持ち手は布袋竹、網は絹糸を編んで柿渋に漬け、防水と補強を施している。アヒルは約300匹を飼育しており、毎日カモをおびき寄せる訓練をしている。
 現在、宮内庁が管理している鴨場は、この「埼玉鴨場」と千葉県市川市の「新浜鴨場」の2か所。埼玉鴨場は1908年(明治41年)に開設された。広さは東京ドームの約2・5倍に当たる約12㌶。樹木や竹林などが生い茂り、「元溜」という約1・2㌶の池には、毎年9月下旬から翌年の4月下旬まで、約2000羽を超す渡り鳥が飛来する。マガモ、コガモ、オナガガモ、ハシビロガモなどのほか、サギやカワウなどの群れが来る野鳥の楽園だ。
 毎年11月半ばから翌年2月半ばに、大使など外交団、閣僚、国会議員、最高裁判所判事などが招かれ、鴨猟を行う。現在は捕獲したカモに標識( 足環)を付け記録した後に放鳥している。最近はカモも捕獲に慣れて、「1年に13回捕まったカモもいる」と村田和久鴨場長が話し、参加者の笑いを誘っていた。
 3回応募してやっと当選した村上教夫さん(74)は「素晴らしい。こういう施設は大切にしないといけない」とうれしそう。80歳の女性は「全部よかった。竹やぶは京都の嵯峨野よりすごかった」と話していた。同市では市内在住者を対象に年4~5回、見学ツアーを開催しており、来年は2、3月を予定。他に、宮内庁が国民を対象に、県が県民を対象に開催している。