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画像、音声で障害児支援・越谷特別支援学校と企業が開発

 映像と音声で肢体不自由児らの体の硬直や緊張を緩和させようという、ユニークなデジタル教材の開発が、越谷市船渡の県立越谷特別支援学校(小池八重子校長、児童生徒232人)と、橋梁メーカー「川田工業」(東京都北区)の共同で進められている。エアートランポリンを活用した“ミニシアター”で、同校小学部1~3年生が寝転びながら、海中や浜辺の光景の映像と心地よい音楽を体験すると、立ち会った研究機関の測定でリラックス効果が確認されたという。同校は「体の緊張が和らぐことを授業と連携させたい」と期待し、企業側も実用化を目指すという、新たな教材として注目を集めそうだ。
 同校には脳性まひなどの肢体不自由児(6歳~18歳)らが通っている。昨年7月、「川田工業」が社会貢献の一環として、「協力したい」と同校に持ちかけ、コントロールが困難な児童生徒らの体の硬直・緊張状態の改善を目指す今回の教材開発がスタートした。
 教材のポイントは、「リラクゼーション効果を高めるため」に、海中や浜辺にいる感覚を映像と音声で再現するというもの。同校にあるエアートランポリン(約3・5㍍四方)の周囲をバルーン製作会社「クラウン・ビー」(春日部市)の協力で手作りした白いカバーで覆って、暗い“ミニシアター”を作った。壁面に3台の投影機で、波打ち際やクラゲの泳ぐ映像を映し、心地よい音楽を流す。
 このほど行われた体験会では、小学部の1~3年生14人が思い思いに寝転んだりしながら、約10分間、「海辺の散歩」を楽しんだ。クラゲなどの映像や音楽が流れると、児童らの手足の緊張がなくなり、リラックスした様子だった。
 体験会には、人間の五感を研究する一般社団法人「KANSEI Projects Committee(カンセイ プロジェクト コミッティー)(KPC)」(東京都世田谷区)のスタッフが立ち会い、児童の胸に心拍数や体温などを測定するモニターを装着し、リラックス・緊張の度合いを体験前、体験中、体験後で比較した。
 この結果、「リラックスするだけでなく、活力も向上していた」(KPCの柳川舞・代表理事)という。
 川田工業新事業企画部の三宅律子主任(42)は「海辺で遊ぶことが難しい子どもたちが、校内でリゾート気分に浸れるように企画した。視覚、聴覚、揺れなどの刺激は緊張緩和につながるはず。検証結果を踏まえて改良し、実用化を目指したい」と話す。
 同校の自立活動専任教諭の西塚裕人教諭(34)は「児童らは手足を伸ばしてリラックスしていた。音楽を聞いて目を閉じる児童もいて力が抜けていた。授業の前に使うと効果的ではないか」と予想以上の効果に驚いていた。
 また、小池校長は「児童の、落ちついた表情が印象的だった。授業に活用できる方法を共同で考えていきたい」と話し、今後も新たな“デジタル教材”の可能性を模索していく。