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越谷/狩猟の伝統守る鴨場見学が人気

「一生に一度見たかった」

120人の定員に700人超の応募があ
った宮内庁埼玉鴨場を見学する参加者
120人の定員に700人超の応募があ った宮内庁埼玉鴨場を見学する参加者

 越谷市大林にある「宮内庁埼玉鴨場(かもば)」の見学会が2月28、29の両日、同市の主催で行われた。2日間とも午前、午後各30人、計120人の定員だったが、めったに見られない施設とあって、6倍近い706人が応募する人気ぶりだった。
 鴨場は1908年(明治41年)に造られ、伝統的な手法によって鴨猟が行われている。皇室が国内外の来賓を招いてもてなす施設で、ほかに千葉県市川市の「新浜鴨場」がある。
 広さは東京ドームの2・5倍に当たる約12㌶。樹木や竹林、草花などが生い茂る緑地帯で、中央に「元溜(もとだまり)」という1・2㌶の池があり、毎年9月上旬から翌年5月上旬まで約2000羽を超す渡り鳥が生息する。マガモ、コガモ、オナガガモ、ハシビロガモ、キンクロハジロ、ホシハジロなどの約10種類の鴨のほか、サギやカワウなどの群れが来る野鳥の楽園となっている。
 鴨猟シーズンの11月15日~2月15日には、各国の外交使節団の長、閣僚、国会議員、最高裁判所判事らが招かれ、江戸時代から伝わる伝統的な手法で猟を行う。現在は国際鳥類標識調査に協力し、捕獲した鴨に標識(足環)を付けて種類や性別などを記録した後に放鳥している。
 参加者は、常駐する5人の職員の案内の下、動画で鴨猟の手法を視聴。訓練されたアヒルを使い、「引堀(ひきぼり)」と呼ばれる水路に鴨をおびき寄せる様子を見学した。鴨猟には、鴨を無傷で捕獲することができる「叉手網(さであみ)」が用いられる。持ち手は布袋竹、網は絹糸を編んで柿渋に漬け、防水と補強を施している。
 アヒルの調教は、毎日同じ時間にケヤキの「板木(ばんぎ)」を小槌(こづち)でたたいて餌を与え、「引堀」におびき寄せる訓練をしている。アヒルと一緒に餌を食べに来た鴨を「小覗(このぞき)」という小さな穴から鷹匠(たかじょう)がうかがい、入ったのを確認して小土手から人が飛び出すと、驚いて飛び立つ。そこを叉手網で捕獲するのが伝統猟だ。
 参加した佐藤玲子さん(76)と小林かね子さん(80)は「広くてびっくりした。念願がかなった。一生に一度、見たかった」と感動していた。3回目でやっと当選したという石井孝雄さん(73)、加代子さん(69)夫妻は「近くに住んでいるが初めて。立派な仕組み、伝統に驚いた。網の手作りもすごい」とうれしそうに話していた。