草加市

草加市・ヤングケアラー経験生かし、オンラインで悩み相談

 家族の介護や家事などを担う子どもや若者ら、悩みを抱えた介護者が交流するオンラインのケアラーズカフェ「care cafe碧空」が昨年8月、オープンした。主宰するのは、自らもヤングケアラーとして祖母の介護を行っていた草加市の野口由樹さん(33)だ。

 両親と祖母、弟妹との6人暮らしだった野口さんは、大の「おばあちゃん子」だった。だが、高校2年生の時、祖母が認知症を発症。持病の治療で通っていた病院からある日、帰宅できなくなり見知らぬ人に連れられて帰って来た。約10年に及ぶ長い介護の始まり。
 母だけでは手が足りず、「家族だから協力して当たり前」と、野口さんも通院に付き添ったりトイレを手伝ったりするようになった。一方、父は仕事で留守がち。小、中学生の弟妹は認知症を理解できず、祖母との間に距離が生まれた。日々の介護で疲れ切る中、「ほかの人は何で手伝ってくれないの?」と苛立ち、家族関係も悪化した。

「care cafe碧空」を主宰する野口さん

 そんな話を友人や先生には打ち明けられず、「言ってもどうせ受け止めてもらえない」と心の中にため込んだ。大学に進学したものの、負の感情は心身の不調となって現れた。食事がのどを通らなくなり、部屋に引きこもる日々。2年で大学をやめた。
 将来が見えない中、支えになったのはケアの経験だった。介護をもっと詳しく知ろうと21歳の時にヘルパー1級の資格を取り、高齢者施設で仕事を始めた。多くの利用者と接することで心に余裕が生まれた。
 25歳の時に「ヤングケアラー」という言葉を耳にし、「ケアラーズカフェ」の存在も知った。「これって私にも当てはまるのでは」と思い、「介護者や支援者の居場所を、必要とする誰かのためにつくろう」と心に決める。

 2年後、祖母が86 歳で他界。自分の役割がなくなった気がして、翌年、施設を退社した。しかし、1年後に一念発起。小学生対象の書道教室を開く傍ら、目標のケアラーズカフェ開設の準備を進めてきた。
 カフェ名「碧空」の「碧」は「ケアの経験が宝物でもあること」を、「空」は「時にむなしい感じもあること」などを意味している。
 現在は毎月第2水曜日の午後9時から10時30分までオンラインで開催。自らのケア生活や介護職での経験を生かし、5~7人のケアラーや支援者らに、悩み相談や心のケアを行っている。「第三者だから言えることもある」と、「自分を追い込まず、今の気持ちを素直に話してもらいたい」とアドバイスする。
 野口さんは「もっと多くの人にケアラーやヤングケアラーの存在を知ってもらい、介護者や支援者の精神面を支えてあげられる社会になれば」と話している。
 <問い合わせ>「care cafe 碧空」 carecaferiku@gmail.com