越谷市

越谷市/「野口冨士男」作品 朗読など 講演に70人

野口冨士男の作品について講演する赤坂さん
野口冨士男の作品について講演する赤坂さん


 小説「暗い夜の私」や終戦後2年間にわたる「越ヶ谷日記」などで知られる小説家、野口冨士男(1911~93年)の作品朗読と講演会が3日、越谷コミュニティセンターで行われ、68人が参加した。野口冨士男文庫運営委員会(勝又浩会長)と越谷市立図書館(茂木実館長)の主催。
 まず、朗読ボランティア「こだま文庫」のメンバーが講談社刊「なぎの葉考・少女」所収の「横顔」を朗読。続いて、作家の赤坂真理さんが「野口冨士男作品を読んで」と題して講演した。
 赤坂さんは「今日は役に立つものを持って帰っていただけたら」と口火を切り、野口のブレないスケッチのような描写や、体調不良でも書き続ける姿勢などの魅力を語った。同図書館と同運営委によって刊行された「越ヶ谷日記」収録の小説「薄日差し」を、「これを読むと慣れた散歩道が違う目で見られる」として推奨した。まだ乱開発されずに残っている越谷の道を読みながら歩いたら楽しいだろう、と締めくくった。
 越谷市郷土研究会の大内登理事は「面白かった。図書のボランティアもやっていたので駆け付けた」。朗読をしている友人の影響で好きになった大越久美子さん(75)は「朗読は内容を理解していないと伝わらない。すばらしいです」と感動を口にしていた。
 野口は妻・直が旧越ヶ谷町(現・越谷市)出身であることから、終戦後の一時期、越谷に住んだ。その縁で、同市は野口所蔵の資料の寄贈を受け、1994年、同図書館内に野口冨士男文庫を開設した。11月22日の命日にちなみ、毎年この時期に講演会と特別展を開催している。今年で29回目。