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八潮/〝世界〟が認めるダンボール影アート

反骨心から生まれた挑戦 会社経営 黒主厳太さん

 八潮市みどり町の黒主厳太さん(23)がこのほど、趣味を生かした事業を自ら経営する会社内で立ち上げた。その趣味とは、段ボールを手でちぎり、グルーガンという接着剤で貼り付けて、光を一方向から当てて影を作るアート作品「ダンボール影アート」。映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」シリーズに登場する主人公、ジャック・スパロウを作ってSNSにアップしたところ、この役を演じる米国の俳優ジョニー・デップ本人から「いいね」と反応があった。

映画「パイレーツ・オブ・カリビアン」のジャック・スパロウ (黒主さん提供の動画より切り抜き)

 また、ダニエル・ラドクリフ演じるハリー・ポッターの影絵は、動画投稿サイト「TikTok(ティックトック)」で日本一「いいね」がついた動画になった。こうした実績から企業案件も舞い込むようになり、ファッションブランド「バーバリー」のロゴなどを制作するまでになった。

映画「ハリー・ポッター」のハリー・ポッター (黒主さん提供の動画より切り抜き)

 黒主さんは草加市出身。母親がパチンコ好きなこともあり、両親が多額の借金を抱える中、児童養護施設に預けられ、小5まで過ごした。それ以降も貧しい暮らしをした経験から、「自分の力で稼ぐ」「エリートになればバカにされない」と反骨心を発揮。

 高校2年生の頃、ゲーム「太鼓の達人」で自ら作成したバチを使って叩く動画を投稿サイト「ユーチューブ」で見てひらめき、ホームセンターで木の棒を購入し、削ってバチに加工。フリマサイト「メルカリ」に出品したところヒットし、かなりの金額を稼ぐことができたという。

「ひらめきをすぐ実行」

 高校卒業後、いったん中小企業に就職したものの、やりたいことをやろうと退社して、おもちゃを制作する「KoreColor(コレカラ)コーポレーション」を設立した。高校生の時に母親が他界。父親も高齢になったことから、「親孝行するためにも覚悟を決めた」と黒主さん。現在、人材派遣の新会社「KoreColorエージェント」も設立準備中だ。

 そうした中、趣味で描いていた絵が周りの人を喜ばせる点に着目。歯磨き粉を使って鏡に人物などの影を描き、電気を消すと陰の部分が黒く浮かび上がる「歯磨き粉アート」や、3か月程前に始めた「段ボールアート」を生かし、アートの事業を展開した。

「ダンボール影アート」初期の頃の作品、志村けん

 黒主さんは「失敗を恐れず、ひらめいたことをその場ですぐ実行することが大切。まず一歩踏み出すこと」と強調する。「時代の流れが早すぎて、自分でも将来のことはわからないが、社員が伸びる環境を見つけ、道を示すことで、会社の成長につなげたい」と笑顔を見せた。