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春日部/思い詰まる〝永遠の愛〟本に

若き日の恋文344通 神屋さん夫妻

自費出版した「ラブレター」を持つ神屋夫妻
自費出版した「ラブレター」を持つ神屋夫妻

 
 春日部市の神屋博太さん(88)と瑩子(えいこ)さん(88)夫婦が、20代の頃、互いに交わした手紙とはがき計344通をまとめた本を自費出版した。その名も「ラブレター」。出会った1958年から、結婚して社宅に住む62年までの5年間、仕事や家族、生活、そして結婚に至るまで、2人の思いがぎっしり詰まっている。 
 きっかけは、押し入れの整理中に出てきた手紙だった。瑩子さんは、74年に身近な生活記録などを文にする「全国ふだんぎ」に入会。2008年には、読売新聞の投稿欄「ぷらざ」に掲載された女性で作る「よみうりこだまの会」に入会し、本制作を趣味にしており、手紙を本にしたらどうかと考えた。
 一方、博太さんは当初、公にするものではないと反対したが、「昭和の風俗が将来、研究書として役立つかもしれない」と協力することにした。「じきにこの世とおさらばするからいいや」とも考えたという。
 制作は20年5月スタート。長男にパソコン入力してもらった。途中で追加もあって予想以上に時間がかかり、印刷会社への原稿渡しに2年間、昨年12月の製本まで約3年半もの月日を費やした。
 作業中、改めて手紙を読んで、瑩子さんは「仕事が大変な中で、(博太さんが)ラブレターを一生懸命に書いてくれたのに、私がフラフラしているから、夫を困らせてかわいそうになってきて、読んでいて涙が出てきた。かなり(私に)振り回されたみたい」と苦笑い。一方、博太さんは「手紙をやり取りしていて、諦めることはなかった」と当時を振り返り、思い出に浸った。
 博太さんが長男、瑩子さんが一人っ子とあって、結婚後の姓をどうするかで双方の家が対立し、結婚は難航した。反対されたため入籍できず、一緒に住み始めたものの、表札やポストに2つの姓を書き、別姓での新婚生活を余儀なくされた。大変な船出だったが、結婚してからのけんかはほとんどない。
 

昭和に育む恋愛の形

 当時の手紙は、1往復で1週間かかった。どこかで会う時に急いで出した速達など、昭和の風景がゆっくり流れる。
 「手紙は、昭和中期の若い男女の遠距離恋愛の主たる手段だった。呼び出し電話や交換台、そういう昭和風俗も見てほしい」と博太さんは話す。
 発行部数は上下巻組み200部。市販されていないが、国会図書館、愛知県「自分史図書館」、埼玉文学館のほか、さいたま市、同市大宮区、春日部市、越谷市、草加市、川越市の各図書館や春日部コミュニティセンターなどに寄贈しているため、そこで読むことが出来る。