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吉川/おもちゃの技術で月面へ タカラトミー開発

吉川市役所に実物大模型 前身・創業者の志を継承

展示されている「SORAーQ」の実物大模型(右)
展示されている「SORAーQ」の実物大模型(右)

 吉川市は、同市平沼出身の富山(とみやま)栄市郎氏(1903~78年)がタカラトミーの母体となる「富山玩具製作所」(後の「トミー」)を創設して2月で100年を迎えることから、3月21日まで同市役所1階コミュニティルーム前でミニ展示会を開催している。タカラトミーが宇宙航空研究開発機構(JAXA)などと共同開発し、先月20日に月面着陸した月面探査機「SLIM(スリム)」の画像を撮影、地球に送信してきた小型変形月面ロボット「SORA―Q(ソラキュー)」の実物大模型も展示されている。宇宙探査に生かされている玩具の技術にも触れられる貴重な機会となっている。
 同氏は24年、現在の東京都豊島区に富山玩具製作所を設立して、金属玩具などを製造。さらに「プラレール」や「トミカ」を開発した。トミーは2006年、タカラと合併した。
 展示会は、昨年、同氏の生涯を紹介するリーフレットを発行したのに続く企画で、同氏の夢や志を紹介し、その夢が現在も受け継がれていることを感じてもらうのが目的だ。
 「SORA―Q」は直径8㌢、約250㌘。「LEV―2」の愛称で知られる。スリムの月面着陸寸前に分離し、スリム着陸を証明する画像の撮影を日本で初めて成功させた。スリムの逆立ちした映像は有名になった。同社の玩具作りによる小型化・軽量化、さらに球体から変形して車輪で移動する柔軟な発想を駆使して作られている。スリムが挑戦した「ピンポイント着陸」などのデータ解析に役立つもので、JAXAでは「決定的な写真。画像のもつ力は大きい」などと高く評価している。
 展示コーナーにはまた、開発中の有人月面車のミニカーや宇宙飛行士姿のリカちゃん人形などのほか、同氏の生涯をたどる年表や資料、タカラトミーの歴史と玩具も展示されている。
 リーフレット作成と今回の展示に携わった同市生涯学習課の菅真由美さんは、来場者に同氏の生い立ちからSORA―Qに至るまで、丁寧に説明をしている。同氏の弟、幸三郎氏が戦後、吉川に戻り、運動会の1~3位にブリキの玩具を渡したことなどを紹介すると、来場者は興味をそそられていた。
 同課の山﨑功二副主幹は「おもちゃのアイデアからSORA―Qが生まれた。バッテリーが切れて今はもう動いていないが、これを機に子どもたちに宇宙に関心を持ってもらい、今度は月にSORA―Qを回収しに行ってほしい」と話していた。