越谷市

「海道西遺跡」が報告書に 越谷 生涯学習フェスで「遺物展示会」

貴重な甕や土器が展示された「遺物展示会」
貴重な甕や土器が展示された「遺物展示会」


 越谷市教育委員会は、昨年4月から5月にかけて発掘した同市大林の「海道西遺跡」の調査報告書(A4判、本文72ページ)をまとめ、発行に合わせて2月26日、同市中央市民会館で開催された「生涯学習フェスティバル」で「遺物展示会」を開催した。
 展示されたのは、出土した甕(かめ)や須恵器と呼ばれる土器など4点。貴重な遺物とあって透明なアクリルケース内に設置され、来場者は初めて公開された遺物から古代ロマンを味わっていた。
 同遺跡は、同市の「河畔砂丘」で初めて発掘された遺跡。平安時代(9世紀頃)の竪穴式住居と河畔砂丘地を示す砂地が発掘された。市内で平安時代の竪穴式住居が発掘されたのも初めて。同じ元荒川流域の西側には「大道遺跡」もあり、古代に複数の集落があったことがわかった。県内の河畔砂丘の南限は越谷市とされ、河畔砂丘で暮らす庶民がいたことを証明する貴重なものとなった。
 河畔砂丘は、河原の砂が風で巻き上げられ、積み上がったもの。砂丘形成には、大量の砂を運べる大河川があり、乾燥した季節に一定方向の風が吹き続けるなど、いくつかの条件がある。国内では珍しく、利根川の旧河道、木曽川、北上川など、太平洋側の大きな河川沿いにしか形成されていない。現在の元荒川は利根川の旧河道。
 今回の発掘は、住宅メーカーの分譲住宅建設に伴い、市教委が昨年4月から5月に実施した。発掘面積は約140平方メートル。発見された竪穴式住居は約14平方メートル。土師器(はじき)、須恵器、土錘(どすい)(魚を捕る重り)など土器類も数千点出土。特徴から平安時代の遺跡と判明した。市内での竪穴式住居発掘は4か所目。
 住居内にはかまどや炭の跡もあり、生活していたことが明らかになった。また、近くには死んだ人を火葬する「火葬土坑」も発掘され、人骨の一部もあった。
 展示会に訪れた市内大林の無職男性(80)は「自宅の近くで古代の人が生活していたことがわかり感動した。土器などの貴重な遺物が見られてよかった」と話していた。